| 3.第二部「情報のユニバーサルデザインとWebアクセシビリティJIS」講師:濱田英雄 氏 (株式会社ユーディット主任研究員)
当社の社長(関根千佳氏)が、この間の台風の一番ひどいときに外でずぶ濡れになって風邪をひいてしまった。講演を欠席することは滅多にないのだが、声が出る状況ではないので今回は急遽私が来させていただいた。
 私は、1998年に世界基準「WAIのガイドライン」のドラフトが出されたことをきっかけに、・肢体障害当事者・0.05の視力・中卒・高年齢といった理由で、ガイドラインに沿ったWebサイト作成を独学で始めた。
 1999年に株式会社ユーディットに入社後、2001年~2004年の間、経済産業省のJIS作成のための委員会の「ウェブ・アクセシビリティWG」主査を務めた。また、2002年からは、神奈川県社会福祉協議会「障害者・高齢者等IT普及推進協議会」委員を、2003年からは、美作大学非常勤講師を務めている。
 
 ■ウェブアクセシビリティの国内外の状況・W3C(World Wide Web Consortium)WWWで利用される技術の標準化をすすめる非営利団体。1994年発足。この中に、WAI(Web
      Accessibility Initiative)と呼ばれる作業部会があり、1999年及び2004年にW3C勧告と呼ばれる「Webコンテンツアクセシビリティ・ガイドライン」(2004年はワーキングドラフト)を発表している。
 ・その他、EU(欧州連合)やISO(国際標準化機構)などでアクセシビリティの世界標準に向けた努力が続けられている。
 ・ポルトガル、タイ、オーストラリア、カナダ等は法令が整備されている。
 ・アメリカは罰則規定を伴ったリハビリテーション法508条があり、この分野では一番の先進国と言える。
 ・オーストラリアでは、シドニーオリンピック公式サイトがアクセシブルでないと、全盲のエンジニアが政府に訴えた。これが認められ、修正するよう要請が出された。
 ・国内では、日立、富士通、IBM、マイクロソフト、NEC、東芝などは公開した形で独自のガイドラインを持っており、これ以外でも社内用のガイドラインを作成しているところが増えている。
 ・自治体では、都道府県クラスでは何らかの取組が行われているが、市以下での対応はまだ難しいようだ。
 ・国では、2004年3月に各府省情報化統括責任者連絡会議において「行政ポータルサイトの整備方針」が決定された。また、5月には障害者基本法の一部が改正され、情報の利用におけるバリアフリー化が規定された。
 
 ■ウェブアクセシビリティJISについて・今年6月20日にJIS X 8341-3 ウェブコンテンツが告示。8341は「やさしい」の語呂合わせ。・当該JISの位置づけとしては、最上位にJIS Z 8071(通称ガイド71)「高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針」があり、その下にJIS
      X 8341-1(共通指針)「情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス」があり、その下に(個別指針)JIS
      X8341-2「情報処理機器」,JIS X8341-3「ウェブコンテンツ」がある。
 ・JIS X 8341-3は、今までのJISにはない分かりやすさが特徴。
 図解や事例、カラー表示を用い分かりやすくした。
 ・内容の特徴としては、制作者だけでなく、発注者や運用・管理担当者などあらゆる人が理解すべきことが明記してあり、また、企画・設計・開発・保守・運用までの全ての工程にわたることが明記されている。
 ・英語圏にはない、日本固有の問題や検証、フィードバック、問い合わせ窓口等のサポートについてまで踏み込んでおり、完全に守ろうとすると、かなり厳しい規格となっている。
 ・FlashとPDFは使ってはいけないわけではない。MacromediaやAdobeも対応してきており、FlashとPDFを用いてもアクセシビリティの高いコンテンツを作成することは可能。但し、古いバージョンのままでは問題が発生する可能性がある。
 
 ■障害者・高齢者のインターネット利用における問題点※新潟県ホームページのトップページを用いて読み上げソフトの実演を行う。※誤った音声の読み上げ方の例を紹介。
 「おくりつきうちよう」→「送 付 内 容」
 「ひがしきょうささえみせ」→「東 京 支 店」
 「あみつどいあとき」→「編 集 後 記」
 など
 文字間にスペースが入っているために起こる現象。
 ※視覚障害(全盲、弱視、色覚)、聴覚障害、高齢者、上肢障害、重度障害の各特徴とその対応方法等について紹介。
 
 ■ウェブサイトにおける問題点と対応・テキストだけのページを作るのが目的ではない。利用者を区別することなく、全ての人が同じページを共有した方がお互いにメリットは大きいだろう。・画像にはALT属性を付けること。画像であることを明記する。但し、意味のない画像には逆に付けると分かりづらくなるので、全角スペースを入れるなどの配慮が必要。また、得にリンク画像にはどこへリンクしているのか示すために、必ずALT属性を付けていただきたい。
 ・日本語のページでは外国語の乱用はせず、誰でも分かるように、カタカナで読み方だけでも付けるよう配慮すること。
 ・色の情報だけに依存しないこと。色の情報は音声では伝わらない。
 ・各ページの頭には適切なタイトルを入れること。
 ・デザインテーブルを使う場合は、音声ブラウザで読み上げられる順番に配慮すること。
 
 ■ウェブアクセシビリティの誤解・テキストだけのページを作るのが目的ではない。・新しい技術を否定している訳ではない。
 ・文字のサイズは固定せず、ブラウザで文字サイズが変更できるようにする。
 ・音声ブラウザを意識したALT属性の設定に努めること。
 ・画像の重さはできる限り軽くすること。回線が遅い人もいる。
 ・音に関しては、音量をおおきくせず、BGM程度になるよう配慮すること。
 ・アクセシビリティに費用や時間がかかる訳ではない。ALT属性を付けるだけで、かなり改善される。外注している場合でも、発注者側でALT属性を考えれば、時間も費用も軽減される。
 
 ■まとめ・制作者が多様な人々がいることを意識するだけでも変わってくる。・Webは人が作り、人が見るものなので、「あなた方を無視するつもりはありません」という気持ちが大切。
 ・心があるかないかはWebに現れる。少なくとも門前払いをするようなことはあってはならない。
 ・必ずしも完全である必要はない。1つのサイトが100歩アクセシブルになるより、100のサイトが1歩前進することが大切。
 
 より多くの人に情報が伝わるように、できる限り配慮したWeb作りを心がけていただきたいと思う。
 
 どうもありがとうございました。
 
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